症状でお悩みの方へ
何かしらのコリや痛みをどこかに抱えながら過ごしている方は少なくありません。
実際、日本人の有病率 1 で最も多いのがコリと痛みであることは、厚生労働省の調査でも明らかになっています。そして、この傾向はずっと前から続いていることでもあります。
また、数万人を対象とした別の大規模な聞き取り調査では、 痛みを抱える数千名のうち、治療を受けた結果に満足できた、という方はわずか3割にも満たなかった、という結果もでています。 2
治療を受けているにもかかわらず、7割の人の症状は思うように改善しない・・・。
医療の進んだ日本で起きていることか、ちょっと耳を疑いたくなる話ですが、紛れもない事実です。
なぜ、このような事態になっているのでしょうか。
その要因としては・・・
- 改善が難しい程度にまで症状が進行してしまっていた。 [症状の程度 ]
- 原因に対する処置が適切でなかった。 [治療内容]
- 適切な処置だったが、結果を伴うには量が足りなかった。 [治療の量]
- 十分な量の処置だったが、変化が定着する前に中断した。 [継続期間]
・・・ など、いくつかの理由が挙げられるのではないかと思います。
上記には、元の状態に回復するのが難しい程度にまで悪化してしまっているケースも一定数含まれているでしょうが、そうでないならば、症状に対して実施している内容や量がマッチしていない可能性が考えられます。
裏を返せば、治療に満足できていない7割の方々のなかに、従来の一般的な治療法以外の方法でなら、改善を期待できる方が一定割合いらっしゃる可能性がある、ともいえるのではないでしょうか。
再発予防センターと考える、 症状の原因
レントゲンや血液検査で異常がなかったにもかかわらず、思うように改善していかない場合などは、血流不全によってもたらされる末梢神経の不調を背景としているかもしれません。
なぜ、血流不全によって不調がもたらされるのかについて、 当院の考えをご説明したいと思います。
そこで、まずは私達の身体に張り巡らされている神経について、その働きと症状との関わりから触れて参ります。
からだの不調を何とかしたいとお考えの方にとって、 痛みやしびれなどと密接に関係している神経をはじめ、
からだの仕組みについて知っておくことは、改善のための第一歩となるからです。
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神経
神経は、神経全体の中心的役割をはたす中枢神経(脳と脊髄)と、その中枢神経から枝分かれし、体中に分布している末梢神経とに大別されます。
末梢神経は、その役目に応じて、
- 感覚器官からの刺激を脳に伝える知覚神経
- 筋肉を制御する運動神経
- 心臓の鼓動や消化器官の動きなどを司る自律神経
・・・などに分けられ、いずれも、私たちの身体を制御するための情報を、電気信号を使って伝達するという重要な役割を担っています。
これら末梢神経は物理的な圧迫に弱く、圧迫された状態が続くと、正しく機能することができなくなります。
また、神経自体は直接圧迫を受けていなくても、その神経に酸素と栄養素を供給する血管が圧迫されると、末梢神経への血流が滞ってしまい、やはり神経は正しく機能することができません。
末梢神経も細胞ですので、正しく機能するためには、他の細胞と同様に十分な酸素と栄養素を必要とするからです。
酸素や栄養素の供給が低下した状態や、神経自体が圧迫された状態が続くと、神経に 異常な電気信号が行き交い始めます。すると、その神経が司る部位に影響が現れます。
例えば、
運動指令を司る運動神経が影響を受けると、筋力低下が出現したり、筋肉が硬くなったりします。
筋肉が硬くなると、関節の負担が増して、関節が変形するリスクが上がってしまいます。さまざまな感覚を伝える知覚神経が酸素不足や栄養不足に陥ると、痛みや痺れといった異常感覚として現れます。
血管や内蔵を支配する自律神経に影響が及ぶと、冷え性や胃腸不良、頻尿や生理痛など、その神経が支配する臓器の症状が現れることがあります。
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筋硬結
〔 筋結節〕私達の身体を動かす筋肉は、筋線維とよばれる細胞の束が集まってできており、力を抜いたときは弛緩しています。
ところが、不適切な身体の使い方などによって、まるで衣服のセーターなどにできる「ほつれ」のように、自然には弛緩できくなってしまった筋線維が生じてしまうと、数mm〜数cmのしこりが筋肉中に現れます。
この筋肉内に生じる硬いしこりは「筋硬結 」または「 筋結節 」と呼ばれ、血管や神経を圧迫し、神経の正常な働きを妨げます。
筋硬結が存在する筋肉は、常に過緊張状態に置かれ、長さも短縮し太くなるため、周囲の血管や末梢神経は圧迫されがちとなり、影響を受けた神経は症状を発します。
硬いしこりである筋硬結の周囲が過敏になっているものは、痛みの震源地としてトリガーポイントと呼ばれてもいます。
筋硬結は、的確な物理的刺激を与えることで消失していくものも多いため、表層部に存在するものであれば、皮膚を介して、硬いゴムのような塊を触知でき、うまくいけばそれを解除できるかもしれません。
一方、深部に存在する筋硬結は、触知が難しく、解消も容易ではありません。 -
瘢痕
「瘢痕」とは、ケガなどの後にできる傷あとのことです。体表が傷を受けたときはもちろん、身体の内部でも、組織の一部が傷ついてしまった際は、炎症反応を通して修復が試みられます。その過程において、一部が正常な組織と置き換わり、線維化してしまったものが瘢痕です。
線維化した組織は柔軟性に乏しいため、周辺の血管や神経を圧迫したり、それらの可動性を制限したりします。 そして筋硬結と同じように神経の正常な働きを妨げ、その神経が司る部位で異常を生じさせます。
また、線維化した組織は正常な組織に戻らず残り続けます。そのため、筋組織など柔らかい軟部組織と、硬い線維化組織との境目には、物理的な負荷が集中しやすくなってしまい、更なる微小損傷の温床となりやすい点で厄介です。
瘢痕による線維化は、ケガなどの非日常的なアクシデントの後に限らず、身体を酷使した場合などでも生じている可能性があります。身体の各部では、微小な損傷と炎症による修復が日常的に繰り返されていると考えられているからです。
微小な損傷後に瘢痕が生じたとしても、その大きさも微小であるため直ちに身体の異常に繋がることはないため、過度に身体活動を恐れる必要はありませんが、 年齢とともに徐々に線維化が進むことがないよう、軟部組織の柔軟性低下を保つための対策は必要です。
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筋膜
筋線維を包み込み、筋肉を形づくる結合組織の膜――すなわち筋膜も神経の働きに影響を及ぼします。
筋膜は複雑な網目構造をした膜で、筋肉がちょうとよい形で動けるよう形状を保持し、筋肉同士の滑らかな動きも生み出す働きがあります。
筋膜は、張力に抵抗するコラーゲンや、弾力性があるエラスチンなどのタンパク質から構成されています。それぞれの特徴により、ある程度の伸張性を持ちながらも、外力から筋肉を保護する強度も兼ね備えています。
筋肉同士は筋膜を介しても連結されているため、筋肉の動きが脊髄や脳に伝えられ、それを元に、脳や脊髄が各筋肉へタイミングよく運動指令を出せる役割もはたしています。
このように筋膜は、身体の各パーツをよどみなく動かすうえで欠かせない存在はですが、筋膜を構成するコラーゲンやエラスチンは、加齢により変性し、失われたり減少したりもするため、年齢とともに筋膜の柔軟性は減少し、筋肉のスムースな動きを制限し始めます。
変性等によって 筋膜のよじれが固定化すると、身体のアンバランスをもたらします。また、瘢痕の場合と同じように、筋膜を通って筋肉内に入り込む血管や神経を圧迫することがあり、凝りや筋肉の痛み、筋力低下などが生じさせます。
筋膜のよじれは、徒手医学のテクニックでもある筋膜リリース法などで対処します。
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関節
骨と骨のつなぎ目である関節は、関節軟骨、関節包、靭帯などから構成されており、筋肉が生んだ力の支点となって様々な動きを可能にしています。
筋肉が骨を動かすとき、骨の先端(骨頭)は、関節包という袋で包まれた関節の内部で、 関節包内運動と呼ばれる 細やかな動きをします。
手足などをスムースに曲げ伸ばしするためには、「すべり」「ころがり」「軸回旋」などの関節包内運動が、連携のとれた円滑なものである必要があります。
例えば、先端が凸形の骨頭が、受け皿側の関節面を転がるだけだと、骨は関節から脱臼する方向に動いてしまいます。
そうならないようにしているのが、骨頭同士を連結し包んでいる 関節包や靭帯です。
関節包は、ちょうど電車の連結部の蛇腹のように、ある位置では弛緩しており、関節の動きにゆとりを与えています。
骨の転がり運動に伴い、運動方向と反対側の関節包が限界まで伸ばされると、骨頭を引き戻すすべり運動を生み、骨頭が関節面から逸脱するのを防いでいるのです。
骨頭がすべる方向は、関節の形状等によって異なります。
骨頭の形が凹形であれば、骨頭の転がり運動と同じ方向にすべり運動が生じます。このように関節の中では、滑りながら転がるような関節包内運動を伴っていますが、この微小な動きが阻害されてしまうと、いわば関節が引っかかったような状態になり、関節を円滑に動かせる範囲――すなわち「関節可動域」に影響を及します。
痛みなどを生み出す関節運動の制限は、靱帯や関節包などの短縮、あるいは筋肉・腱・筋膜などの柔軟性低下、あるいはその両方に起因することが多く、治療せずに放置すると、関節の可動性が低下し、最終的には変性の兆候が現れ始めます。
特に大きな力を発揮する筋肉が短縮すると、骨に接続している腱を介して、関節に著しい負荷をかけてしまうため、要注意です。
関節の可動域や関節包内運動を、他人と比べる機会は少ないためか、当院でも「指摘されるまで、自身の可動域制限に気づいていなかった」という例にしばしば遭遇しますが、階段の上り降りなど、日常動作を楽に行うためには各関節に十分な可動域が必要です。 1つの関節の可動性に制限があると、他の関節の負担が増し、通常の活動を簡単かつ快適に行うことが困難になるため、何らかの違和感を感じている場合は、早めの対処をおすすめします。
脊柱や手足の関節に異常がある場合、徒手医学のテクニックを用いて正常な動きへの改善を図ります。